小規模宅地等の減額特例の改正 その1

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小規模宅地等の減額特例の改正 その1

第17回のコラムから、「相続税の節税」を少し掘り下げてご説明していますが、今回は平成27年1月1日から施行された相続税の改正について、第17回の基礎控除の引き下げに続き、小規模宅地等の減額特例の改正について説明し、具体例を使って検証したいと思います。

まず、小規模宅地等の減額の特例の内容について、第13回コラム「小規模宅地等の減額特例」で説明したように、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等や被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合が減額されるという特例です。

要は、被相続人が住んでいた自宅の土地や仕事に使っていた土地などについて一定の割合(最大80%)が減額されるという特例です。

今回の改正により評価の減額が行われる限度面積や適用面積の拡大が行われました。宅地等の種類ごとに次のとおりの改正となります。

(宅地等の用途) (改正前) (改正後)
1 自宅の土地 240m²まで80%減 330m²まで80%減
2 賃貸以外の事業用の宅地 400m²まで80%減 400m²まで80%減
(変更なし)
3 オーナー会社へ賃貸している土地 400m²まで80%減 400m²まで80%減
(変更なし)
4 1と2や3を併用する場合 合計400m²(※1)まで80%減 合計730m²(※2)まで80%減
※1改正前は調整計算が必要:1の面積×5/3+2,3の面積≦400m²
※2改正後は調整計算が不要:1の面積+2,3の面積≦730m²
ただし4は、5の不動産貸付の土地の適用を受けない場合に限ります。
5 不動産貸付の土地 200m²まで50%減 200m²まで50%減
(変更なし)
6 1、2、3と5を併用する場合 調整計算が必要となります(4の改正の影響あり)。
多少複雑なため、次回の計算例で説明します。

いくつか土地を所有している場合には、上記のいずれかを選択して適用することになります。減額が大きいものを選択する方が有利になります。

今回の改正では、自宅の土地の限度面積が拡大した点(上記1)、および自宅の土地と賃貸以外の事業用の宅地・オーナー会社へ賃貸している土地の特例を併用する場合、調整計算後の各限度面積内で合計400m²まで限定的に適用可能であったものが、改正後は調整計算が不要で合計適用面積が730m²となり、それぞれの限度面積まで完全に適用できるように改正されました(上記4)。

改正前も小規模宅地等の減額の特例は相続税減少効果の高い特例でしたが、今回の改正では、土地面積が240m²より広い場合や賃貸以外の事業用の宅地等も所有し併用できる場合、改正でさらに優遇される特例となりました。この改正点について、第13回のコラム「小規模宅地等の減額特例」より掘り下げて検証します。

〇相続税額計算例

<設定1>自宅の土地が300m²(1m²当り20万円)あるとした場合
第13回コラム「小規模宅地等の減額特例」と同じ設定)

土地の価額 20万円 × 300m² = 6,000万円
(改正前:宅地の限度面積は240m²まで)
小規模宅地等の減額 20万円 × 80% × 240m² = 3,840万円
相続税法上の土地の価額 6,000万円 - 3,840万円 = 2,160万円
(改正後:宅地の限度面積は330m²まで)
小規模宅地等の減額 20万円 × 80% × 300m² = 4,800万円
相続税法上の土地の価額 6,000万円 - 4,800万円 = 1,200万円

この設定の例では、相続税法上の土地の価額は、改正前2,160万円から改正後1,200万円の変更で960万円評価額が減少し税額が下がります。

<設定2>自宅の土地が300m²(1m²当り20万円)と賃貸以外の事業用の土地が200m²(1m²当り30万円)あるとした場合

土地の価額 20万円 × 300m² + 30万円 × 200m² = 12,000万円
(改正前:地宅の土地の限度面積は240m²まで、賃貸以外の事業用の宅地は400m²まで、各限度面積内で合計400m²まで、調整計算要)

小規模宅地等の減額

[調整計算]
自宅の土地の面積 × 5/3 + 賃貸以外の住宅用の土地の面積 ≦ 400m²

A.自宅の土地を優先する場合
自宅の土地は240m²(限度面積)× 5/3 = 400m² のため賃貸以外の住宅用の土地は各限度面積内合計400m²の残り0m²となります。

自宅の土地: 20万円 × 80% × 240m² = 3,840万円
賃貸以外の住宅用の土地: 30万円 × 80% × 0m² = 0万円
合計: 3,840万円

B.賃貸以外の住宅用の土地を優先する場合
賃貸以外の住宅用の土地は200m²のため、自宅の土地は各限度面積内で合計400m²の残り200m²より、
200m² ÷ 5/3 = 120m²
120m² × 5/3 + 200m² = 400m²
となります。

自宅の土地: 20万円 × 80% × 120m² = 1,920万円
賃貸以外の住宅用の土地: 30万円 × 80% × 200m² = 4,800万円
合計: 6,720万円

今回の例ではB.賃貸以外の住宅用の土地を優先する場合の方が合計額が大きく、こちらの選択が有利となります。

小規模宅地等の減額 6,720万円
相続税法上の土地の価額 12,000万円 - 6,720万円 = 5,280万円
(改正後:地宅の土地の限度面積は330m²まで、賃貸以外の事業用の宅地は400m²まで、各限度面積内で合計730m²まで、調整計算不要)

小規模宅地等の減額

調整計算は不要となったため、各土地の限度額のみ考慮します。
自宅の土地: 20万円 × 80% × 300m² = 4,800万円
賃貸以外の住宅用の土地: 30万円 × 80% × 200m² = 4,800万円
合計: 9,600万円

小規模宅地等の減額 9,600万円
相続税法上の土地の価額 12,000万円 - 9,600万円 = 2,400万円

この設定の例では、相続税法上の土地の価額は、改正前5,280万円から改正後2,400万円の変更で2,880万円評価額が減少し税額が下がります。

このように、税制は経済情勢等により変更されることがあります。定期的に相続対策を見直し、新しい制度が制定された場合などに対応していきましょう。

次回は、もう少し複雑な6不動産貸付の土地を所有し併用する場合の計算例を用いて、詳しく説明していきます。